近年、インテリアグリーンとして人気を誇る着生植物「ビカクシダ」。様々な種類のビカクシダがありますが、その多様性のベースとなっているのが、世界中の熱帯地域に自生する「18原種」です。
現在では、18原種を元に新たな品種交配、選抜といったことが盛んに行われております。
この記事では、ビカクシダ18原種のそれぞれの特徴や自生地、育てる上で注意すべき点を解説します。
ビカクシダについて
ビカクシダ(学名:Platycerium)は、主に熱帯雨林の樹木や岩肌に根を張って生きるウラボシ科のシダ植物です。和名では「鹿角羊歯」、英名では「Staghorn Fern」とも呼ばれます。

ビカクシダは熱帯地域に自生しており、
- 東南アジア
- オセアニア
- アフリカ
- 南米
に分布しています。

ビカクシダは貯水葉と胞子葉と呼ばれる葉で構成されています。
貯水葉
株の根元を包み込むように広がる葉です。野生下では、樹木にしがみつく役割を果たすとともに、落ち葉や雨水をキャッチして自ら堆肥を作り出し、水分と栄養を蓄える役割を持っています。
胞子葉
前方に突き出すように伸び、成長すると葉の裏側に胞子嚢(ほうしのう)をつけ、胞子を散布する役割があります。
基本的な育て方
種によって最適な育て方が異なりますが、ベースとなる育て方は以下の通りです。
日光
明るい日陰が適しています。直射日光に当て続けると、葉焼けや最悪の場合枯れることもあります。逆に弱すぎる環境だと、徒長したり光合成ができず弱る可能性があります。屋内管理であればLEDライトの下、屋外であれば明るい日陰で管理しましょう。
温度
一部のビカクシダは5℃前後でも生存する種もありますが、ほとんどすべてのビカクシダは熱帯地域に自生しているため、寒さには弱いです。15℃以上を心がけましょう。
水やり
基本的にはや水苔が軽くなり、ある程度乾いてから水を与えましょう。ただし、一部の種は乾燥に弱い特性がある場合もあります。
風
自然界では木や岩に着生しており、風のあたる環境で育っているため、蒸れに弱いことが多いです。室内で育てる場合には屋外の風を再現するためにサーキュレーターの設置がマストです。
※なお、この育て方は生産者の方からいただいた情報をもとに作成しております。
18原種について
リドレイ(P.ridleyi)

自生地
マレー半島やボルネオ島など
概要
ビカクシダの中でも圧倒的な人気を誇る原種です。鹿の角を思わせる細く分岐した胞子葉と、葉脈が美しく浮き上がるキャベツ状の貯水葉が特徴です。成熟すると胞子葉に「スプーン」と呼ばれるスプーン状の胞子嚢群を形成し、ここから胞子を採取できます。原産地では高木の樹冠近くに着生し、明るく風通しの良い環境を好みます。
特記事項
根腐れを起こしやすいので、サーキュレーターなどで風が動き続けていることが重要です。頻繁に水やりすると根腐れを起こすので、乾いてからと水を与えましょう。上級者向きと言われておりますが、風を当てて乾燥気味に育てれば、初心者の方でも簡単に育てることができます。
屋外で育てると、害虫に葉を食べられやすいので、室内管理が推奨されます。
コロナリウム(P.coronarium)

自生地
タイ、マレーシア、インドネシアなど
概要
18種あるビカクシダ原種のなかでも大型で存在感があり、人気の高い種です。垂れ下がるように伸びる長い胞子葉と、ラテン語の corona(王冠)を由来とする名のとおり、王冠のような形の貯水葉が特徴です。
グランデ(P.grande)

自生地
フィリピン
概要
1mを超えることもある大型種で、王冠のように大きく広がる貯水葉が特徴的です。自然界ではこの貯水葉が雨水や落ち葉、枝などを溜め込み、養分として生存・成長しています。

オーストラリア原産のスパーバムと見た目がよく似ていますが、グランデは貯水葉の上部の分岐が少なく、丸みのある柔らかな印象があります。また、胞子嚢の数が、スパーバムは1つ、グランデは2つであることから簡単に見分けることができます。
日本の園芸店でグランデとして販売されているビカクシダは実はスパーバムであることが多いと言われております。
特記事項
大きくしたい場合は、水と肥料を多めに与え、小さく育てたい場合は乾燥気味で、肥料は最低限にすると良いです。ただし、大型種ですので、乾燥気味に育てたとしても1mを超える可能性があります。
ホルタミー(P.holttumii)

自生地
タイ、カンボジア、ラオスなど
概要
1mを超えることもある大型種で、王冠のように大きく広がる貯水葉が特徴的です。自然界ではこの貯水葉が雨水や落ち葉、枝などを溜め込み、養分として生存・成長しています。胞子葉が2段のように見えることが特徴で、同じく大型種のグランデやスパーバムと比較すると、躍動感があり、胞子葉の印象が強いことが特徴です。
特記事項
大きくしたい場合は、水と肥料を多めに与え、小さく育てたい場合は乾燥気味で、肥料は最低限にすると良いです。ただし、大型種ですので、乾燥気味に育てたとしても1mを超える可能性があります。
ワリチー(P.wallichii)

自生地
ミャンマー、タイ、インドなど
概要
原種のなかでも流通量が少なく、希少性の高い種です。王冠のような貯水葉と、立体感のあるくっきりとした葉脈の胞子葉が特徴です。乾季や気温の低下により休眠に入る特性があり、その間は胞子葉が枯れたように縮んでしまいます。春になると再び新しい胞子葉を展開する、ビカクシダのなかでも個性的な種です。休眠期の水やり管理が難しいことから、栽培上級者向けとされています。
特記事項
蒸れることを嫌うので、土や水苔が乾いてから水を与えると良いです。気温が低くなると休眠する特性があり、貯水葉と胞子葉が枯れたように見え、成長が止まり、胞子葉は内側に丸まります。暖かい時期になると、また新しい葉を出すという特徴があります。
ワンダエ(P.wandae)

自生地
パプアニューギニア
概要
1mを超えることもある大型種で、王冠のように大きく広がる貯水葉が特徴です。グランデやスパーバムとは異なり、力強さよりも優雅さを感じさせる佇まいから、「ビカクシダの女王」と表現されることもあります。グランデやスパーバムと混同されますが、胞子葉が2段になっており、はっきりとした違いがあります。
特記事項
大きくしたい場合は、水と肥料を多めに与え、小さく育てたい場合は乾燥気味で、肥料は最低限にすると良いです。ただし、大型種ですので、乾燥気味に育てたとしても1mを超える可能性があります。
ウィリンキー(P.willinckii)

自生地
インドネシア(ジャワ島など)
概要
特に人気の高い種で、貯水葉の上部は尖った冠状になり、胞子葉は細長く、白い星状毛に覆われ、下方向に分岐しながら垂れ下がる特徴があります。名前がついている選抜個体も多く、同じウィリンキーでも見た目が大きく異なる場合もあります。
アルシコルネ(P.alcicorne)


自生地
アフリカ、マダガスカル
概要
アフリカ産とマダガスカル産があり、マダガスカル産はバッセイ(vassei)や略してアルマダ(P.alcicorne var.Madagascar)と呼ばれることもあります。どちらも胞子葉が上向きに育ちますが、アフリカ産は長めで深い切れ込みが入り、マダガスカル産は浅い切れ込みで分岐が少ない特徴があります。また、アフリカ産の貯水葉は艶がある傾向があります。
エリシー(P.ellisii)

自生地
マダガスカル
概要
ツルツルした丸い貯水葉と、深く分岐せず、幅広で大きな胞子葉が特徴で、フレッシュな印象があります。比較的コンパクトなサイズのため、大きくなりすぎる心配がありません。
ステマリア(P.stemaria)

自生地
アフリカ
概要
先端が2つ分岐し、Vの字のような形状の下に垂れ下がる胞子葉が特徴です。成長すると1mを超えることもある種です。
マダガスカリエンセ(P.madagascariense)

自生地
マダガスカル
概要
18原種の中で唯一無二のビジュアルを持つマニアに人気の種です。幅広の胞子葉はあまり目立ちませんが、貯水葉がリドレイよりももっと凸凹していることが特徴です。暑さと寒さ、乾燥に弱く、最高難易度の種です。
特記事項
乾燥に弱い性質があるため、根腐れに気を付けつつ、水苔が乾き切ることがないようにしてください。また、高気温(28℃)だと調子を崩す傾向にあるため、夏場は暑くなりすぎないように注意が必要です。
クアドリディコトマム(P.quadridichotomum)

自生地
マダガスカル
概要
乾季になると胞子葉が完全にクシャクシャに縮れて枯れたようになり、雨が降ると復活するという極めて珍しい生態を持っています。胞子葉が4つ(quad: 「4つの」という意味)に分かれることから、クアドリディコトマムと名付けられています。マダガスカリエンセと同様に、栽培難易度は最高とされています。
特記事項
乾燥や気温低下により休眠期に入ることが多いです。休眠期は胞子葉が内側に丸まり、乾燥から守る特性があります。休眠期は成長しないですが、全く水がない状態だと枯れてしまうため、乾燥してきたら控えめに水を与えます。ただし、与えすぎると根腐れの原因となるため、乾燥気味に育てると良いです。休眠期が明けると、成長が始まります。
アンゴレンセ(P.angolense)

自生地
アフリカ
概要
ゾウの耳のような、一切分岐しない巨大な一枚の胞子葉が特徴です。このことから、以前は「エレファントティス」という名で呼ばれていました。
アンディナム(P.andinum)

自生地
南米(ペルー、ボリビア)
概要
18原種の中で唯一「南米大陸」に自生する、希少な種です。株全体が非常に濃い白の星状毛で覆われており、肉厚でモフモフした質感が特徴です。1mを超える大型種のため、サイズに注意する必要があります。
特記事項
寒さ(15℃)と暑さ(30℃以上)が苦手な傾向があります。大型種のため、肥料を多く与えると大きくなりすぎる可能性があります。
ベイチー(P.veitchii)

自生地
オーストラリア
概要
胞子葉が上方向にのび、貯水葉の鋭い切れ込み、全体が星状毛で覆われていて、白く見えることが特徴の種です。寒さや、強めの日光、乾燥にも耐えることから、初心者向けの種と言われています。
特記事項
生産地では直射日光を浴びることもあることから、強い光にも耐えることができます。ただし、急激な環境の変化や風の有無などによって体調を崩すことも考えられるため、徐々に光の強さを調整してください。日光が足りないと、徒長することもあります。
ビフルカツム(P.bifurcatum)

自生地
オーストラリア、インドネシア
概要
いわゆる「コウモリラン・ビカクシダ」として一般の園芸店やホームセンターで最も多く流通している原種です。暑さ、寒さ、乾燥にも強く、環境適応力が高いため、初めての株に最適です。
特記事項
5℃ぐらいまでの寒さに耐性があります。乾いてから水やりし、直射日光を避けていれば、まず枯れることがないです。そのため初心者向きと言われています。
ヒリー(P.hillii)

自生地
オーストラリア、ニューギニア
概要
丸く根元を覆うように貯水葉が成長し、胞子葉は幅が広く「ヘラジカ」のようだと形容されることもあります。暑さと寒さに強く、丈夫であることから初心者におすすめです。
スパーバム(P.superbum)

自生地
オーストラリア
概要
1mを超えることもある大型種で、王冠のように大きく広がる貯水葉が特徴的です。自然界ではこの貯水葉が雨水や落ち葉、枝などを溜め込み、養分として生存・成長しています。東南アジア原産のグランデと見た目がよく似ていますが、スパーバムは貯水葉の上部が細かく、よりシャープな印象を与えます。また、胞子嚢の数がグランデでは2つ、スパーバムは1つであることから簡単に見分けることができます。

なお、日本の園芸店やホームセンターでグランデとして販売されているビカクシダの大半は、実はスパーバムだと言われています。
特記事項
大きくしたい場合は、水と肥料を多めに与え、小さく育てたい場合は乾燥気味で、肥料は最低限にすると良いです。ただし、大型種ですので、乾燥気味に育てたとしても1mを超える可能性があります。
まとめ
以上がビカクシダ18原種の紹介でした。
自生地の環境によって見た目や育て方に大きな違いが出ています。
初心者向きや上級者向きという分け方がされることは一般的ですが、最終的にはご自身が育ててみたいかどうかが一番重要だと思います。
一部の種は育てることが難しいですが、自分が興味のある育てたい種を選べば、きっと大切にして、ちゃんと育てることができるはずです。
好きな種を選びましょう!
当店では時期によりますが、原種の胞子をメインで取り扱っておりますので、ぜひショップを覗いていってください!